離婚の種類
協議離婚
夫婦の合意によって離婚する場合で、離婚原因に制限はありません。離婚届に夫婦及び成人2人の証人が署名・捺印して、夫婦の本籍地または住所地の市区村町役場に届出ることによって成立します。
未成年の子供がいる場合、親権者を決めて離婚届に記載しなければ協議離婚はできません。後に親権者を変更するには家庭裁判所の許可が必要となるので、離婚の際の親権者の決定は慎重に行って下さい。
また、離婚の際には、財産分与、慰謝料、養育費、子供との面接交渉について取り決めておくべきです。なお、私人間の合意文書だけでは法的な強制執行力がないので、合意内容を強制執行認諾文付きの公正証書にしておくべきでしょう。
離婚をすると、婚姻前の氏に戻ります。婚姻中の氏を称したい場合は、婚姻届と同時、もしくは離婚の届出日から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場に提出します。
調停離婚
夫婦の一方が協議離婚に応じない場合、すぐに離婚の裁判をするのではなく、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」の申立を行う必要があります(調停前置主義)。この調停で成立する離婚のことを調停離婚といいます。
調停には裁判のような強制力が無いため、夫婦の合意がない限り離婚は成立しません。調停で相手方が離婚に応じない場合に初めて裁判となります。
調停を申立てる場合、離婚理由に制限はありません。有責配偶者からの申立も認められます。
離婚だけでなく、財産分与、慰謝料、婚姻費用分担、親権者・監護者、養育費、面接交渉などの問題も同時に解決できます。
審判離婚
調停が成立しない場合、家庭裁判所が調停に代わる審判をすることができます。この審判によって成立する離婚を審判離婚といいます。
この離婚の審判では親権者・監護者の指定や養育費、財産分与、慰謝料等の給付を命じることもできます。
ただ、審判告知の日から2週間以内に当事者の一方から異議申立があると審判は当然に効力を失うため、非常に例が少ないのが現状です。異議申立がなく確定すれば、この審判は確定判決と同一の効力を有します。
審判に適する事件としては、下記が挙げられます。
- 当事者間に離婚の合意は成立しているが出頭できない等、何らかの事情により調停という形式を踏むことができないとき
- 合意できない理由が主に感情的反発であるとき
- 親権者の争いなどで、その時点における家庭裁判所の判断を示すことに意義があるとき
- 早期解決の必要性のあるとき
裁判離婚
協議離婚ができず、調停、審判でも離婚が成立しなかった場合、家庭裁判所に離婚訴訟を提起して離婚認容判決を得る必要があります。
裁判離婚は、次に挙げる民法上の離婚原因がなければ認められません(民法770条1項)。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
離婚訴訟においては、親権者の指定、養育費、財産分与、慰謝料の請求も同時に行うことができます。
離婚と金銭の問題
婚姻費用分担請求
婚姻費用とは、夫婦が通常の社会生活を維持するのに必要な生活費をいい、衣食住の費用・医療費・交際費・子供の養育費(監護費用)・教育費等が含まれます。婚姻が破綻して別居に至った場合に、生活に困った配偶者から他方の配偶者に対して行うのが典型的な例です。
分担額は、夫婦間の協議で決めます。協議で決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申立てます。調停でも合意が成立しなければ、家庭裁判所の審判で決めます。
分担額の決定に当たっては、調停、審判において算定表が広く使用されている実情にありますが、別居に至った事情、夫婦関係の破綻の程度、破綻に対する当事者の責任の程度、当事者の資産・収入その他一切の事情も考慮されてケースバイケースに決定されます。
いつからいつまでの婚姻費用分担金の請求が認められるかですが、一般的には、「調停・審判の申立時から離婚または別居が解消されるまで」とされています。
財産分与請求
財産分与請求とは、離婚をした者の一方が相手方に対して財産の分与を請求することをいいます。
- 婚姻中の夫婦共同財産の清算(清算的財産分与)
- 離婚後の経済的弱者に対する扶養料(扶養的財産分与)
- 離婚による慰謝料(慰謝料的財産分与)
といった3要素があります。
- 清算的財産分与
婚姻中に形成した財産の清算です。たとえ一方配偶者の名義であっても、他方の協力・貢献があったからこそ形成維持された財産については、離婚の際に貢献の割合に応じて清算されます。 - 扶養的財産分与
夫婦の一方が離婚によって生計を維持できなくなる場合に、他方に対し請求するものです。請求者に要扶養性があり、義務者に扶養能力があることが必要です。清算的財産分与も慰謝料も請求できないか、できたとしてもそれだけでは生活を維持できない場合に、これを補うものとして請求が認められます(補充性)。
扶養の額や扶養の期間の算定に際しては、夫婦の資力、婚姻期間、夫婦の年齢、離婚後の一方配偶者の生活の不安の程度、夫婦の病気、破綻の責任、子の養育費などが考慮されます。 - 慰謝料的財産分与
財産分与の額を決定するに際し慰謝料の要素も含めることもあります。後日の紛争を防止するためにも、財産分与に慰謝料を含んでいるか否かを明記しておくべきです。
財産分与に慰謝料が含まれており、精神的損害に対して十分に補填されている場合は、別個に慰謝料請求をすることはできません。財産分与に慰謝料が含まれていない場合、あるいは、含まれていたとしても精神的苦痛を慰謝するに足りない場合は、別個、慰謝料請求ができます。
慰謝料請求
相手方の有責行為によって離婚に至った場合、これによって被る精神的苦痛に対する損害賠償請求を慰謝料請求といいます。
慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償(民法709条、710条)ですが、財産分与の一部として支給されることもあります。
慰謝料の額は、夫婦間の協議で決めます。協議で決まらない場合は、調停、もしくは地方裁判所に提訴して決まります。ただし,離婚訴訟と同時に慰謝料請求をする場合には,離婚訴訟と併合して,家庭裁判所に請求することもできます。
慰謝料の算定に際しては、不貞行為や暴力などの有責性の態様・程度、精神的苦痛の程度、婚姻期間、当事者の年齢、当事者の資力や社会的地位、未成年の子の存在などを考慮して決定されます。金額は、平均で200万円くらいです。
第三者に対する慰謝料請求
夫の親などの親族が原因で離婚に至った場合や、不倫が原因で離婚に至った場合は、親族、不倫相手に対して、精神的苦痛の慰謝料として損害賠償請求ができます(民法709条、710条)。
慰謝料の額は、当事者の協議で決まらない場合は、地方裁判所に提訴して判断されます。
慰謝料の算定に際しては、婚姻期間、子供の有無、不貞行為の頻度・期間、相手方の支払能力や社会的地位などを考慮して決定されます。相場は100万円~200万円です。
離婚に伴う子の問題
親権
夫の親などの親族が原因で離婚に至った場合や、不倫が原因で離婚に至った場合は、親族、不倫相手に対して、精神的苦痛の慰謝料として損害賠償請求ができます(民法709条、710条)。
慰謝料の額は、当事者の協議で決まらない場合は、地方裁判所に提訴して判断されます。
慰謝料の算定に際しては、婚姻期間、子供の有無、不貞行為の頻度・期間、相手方の支払能力や社会的地位などを考慮して決定されます。相場は100万円~200万円です。
- 未成年の子がいる場合、親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚はできません。親権は、財産管理権(民法824条)と身上監護権に大別されます。身上監護権の内容は、監護・教育権(820条)、居所指定権(821条)、懲戒権(822条)、職業許可権(823条)、身分行為の代理権(775条、791条、797条等)、身分行為の同意権(737条)です。
- 離婚の場合、親権者とは別に監護者を定めることができます(766条)。この場合、親権者は財産管理権と身分行為の代理権・同意権を有し、監護者は監護・教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権を有するとされています。
- 親権者は夫婦の協議で決定します。協議が成立しなければ、家庭裁判所に親権者指定の調停を申立てます。調停が成立しない場合は、家庭裁判所が審判で親権者の指定をすることができます。裁判離婚の場合、裁判所が判決主文で親権者を指定します。
- 審判、判決による親権者・監護者の指定は、子の利益、福祉を基準に決定されます。判断に当たって斟酌される事情としては、次のものがあります。
- 父母側の事情
心身の状態、生活態度、経済状態(資産・収入)、家庭、 環境、住居、教育環境、子に対する愛情の度合い、従来の監護状況、監護補助者の有無、父母の再婚の可能性、離婚の有責性など - 子側の事情
子の年齢と意思
0~10歳・・・母親が親権者・監護者になるケースが多いです
10~15歳・・・子の心身の発育状況により子の意思を尊重します
15歳以上・・・子の意思を尊重します
- 父母側の事情
- 親権者の変更は、当事者の協議や戸籍の届出だけではできず、家庭裁判所の審判手続によらなければなりません。これに対し、監護者の変更は、戸籍上の記載もないので、当事者の協議だけでも行えます。
面接交渉権
面接交渉権とは、離婚後、親権者または監護者にならなかった一方が、子供と会う権利をいいます。
面接交渉権は、親として当然に有する権利であるため、全面的に否定することはできません。しかし、会うことで子供に悪影響があると認められる場合(暴力をふるうなど)には、制限することができます。
養育費
- 養育費とは、未成熟子が独立の社会人として成長自立するまでに要する全ての費用、つまり衣食住の費用、教育費、医療費、適度の娯楽費などをいいます。
- 養育費は、未成熟子と生活を共にしない側が支払うものです。養育費の支払いは、親の子に対する扶養義務に基づくもので、親権の有無に係わらず生じます。
- 協議離婚の際、養育費について合意することができます。養育費は分割払いとされることが多いので、そのような場合には支払期間、支払金額、支払方法について具体的に決めておくべきです。私人間の合意文書だけでは法的な強制執行力がないので、合意内容を強制執行認諾文付きの公正証書にしておくべきでしょう。
- 協議ができないときは、家庭裁判所に養育費請求の調停を申立てます。調停で合意できず不成立となった場合は、家庭裁判所が審判で決定します。裁判離婚の場合は、附帯処分の申立として養育費の請求をすれば、裁判所が、判決で養育費を決定します。
- 養育費の算定に際しては、調停、審判において広く算定表が使用されている実情にありますが、双方の資産、収入、職業、社会的地位なども考慮して決定されます。子供1人の場合は月2~6万円、子供2人の場合は月4~6万円の例が多いのが現状です。
- いつからいつまでの養育費の請求が認められるかですが、始期は、一般的には、調停・審判の申立時から認められるケースが多いです。終期は、子供が成人に達する月までが原則です。例外として、親の資力、学歴、その他家庭環境を考慮して延長又は短縮されます。
大学の学費が養育費として請求できるか問題となりますが、今日、大学に進学することは世間一般の通例であるので、認められています。 - 養育費の変更
当事者の養育費取決め時の事情が変化した場合には、養育費の増減額請求ができます。
増額事情・・・子供の入学・進学、請求者側・子供の病気・怪我、請求者側の失業・転職による収入の低下など
減額事情・・・義務者側の病気、義務者側の失業・転職による収入の低下、請求側の再婚・再婚相手との養子縁組など - 養育費を請求しない旨の合意がある場合
離婚の際、父が母に対し、子の養育費を一切請求しない旨の念書を受け取っているような場合に、母からの養育費の請求は認められません。これに対し、子からの扶養料の請求が認められるかは、支払金額、支払方法、念書の趣旨、約束の具体的内容、支払済の金銭の消費の内容、不足に至った事情、請求する子の年齢、以後の事情の変化等諸般の事情を考慮して判断されます。
子の戸籍・氏
例えば、離婚によって母が婚姻前の氏に復しても、子の氏は変更されず、子は婚姻中の戸籍に残ります。子の氏を母の氏に変更して母の戸籍に入れたい場合は、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立をして、変更許可の審判を得ます。そして、この許可審判書を添付して子の入籍届を市区町役場に提出します。
子が15歳未満の場合で、親権者が父である場合、子の氏を母の氏に変更する、あるいは母の戸籍に入れるには、親権者たる父が同意して申立をしてもらわなければなりません。
子が15歳以上の場合は、子が自ら氏の変更許可申立をすることができます。
上記の手続きによって氏を改めた未成年の子は、成人に達した時から1年以内に届出ることによって、従前の氏に戻ることができます。